松本清張作品研究 付・参考資料

昭和32年発表の『点と線』によって、それまでの堅実な歴史小説家から、異色の推理作家として、あっという間に流行作家の地歩を築いた松本清張。小説を支える要素は様々でも、一貫して人間の人生の集積たる歴史の中から共感の人生を拾って、それを描写し続けた態度に共鳴しつつ、全集に収録された約390編の清張小説の全貌について、いくつもの切り口からそれらを分析考察、冷静に清張文学の本質を探る。また、全作品一覧をはじめとする7種類の参考資料を付し、書誌的資料としても活用できるよう努めた。清張作品と作家清張の本質にあるゆる視点から迫る。

第1章　緒論 一　作品の形態 二　作品の性格 三　作品の主題 四　作品の掲載誌 第2章　清張作品の文章・表現 一　文章の長さ・会話・修飾・人称 二　漢語・情趣・地名 三　描写 四　冒頭と終末 第3章　清張作品の語彙 一　用語と区別 二　清張用語 三　漢語表現 四　清張作品の語彙―まとめ― 第4章　清張小説の描くもの 一　愛―疑惑の感情― 二　女―性愛の諸相― 三　人―虚飾の権威― 四　金―闇の世界― 五　生―その諸相― 六　まとめ―小説素材の変遷― 第5章　清張小説の方法 一　語られた体験―自伝と日記に見る― 二　重複する小説内容 三　語られ方―人称・語り手・手段― 四　まとめ―清張の小説語り― 第6章　自伝あるいは自伝風小説 一　自伝・自伝風・自伝要素小説 二　自伝小説 三　自伝風小説 四　自伝要素小説 五　清張の自伝と自伝風小説 第７章　清張の推理小説 一　推理小説の型 二　展叙型 三　トリック 四　動機 五　社会派推理小説 第8章　清張の小説意識 一　不要な推理小説 二　意味不明な殺人 三　理解出来る殺人 四　清張の小説意識―小説は推理 第9章　清張小説の性格―純文学と通俗小説 一　清張の小説批評 二　純文学論争 三　昭和三十六年の文学状況―新聞・文芸時評から― 四　松本清張と純文学 五　清張作品の性格 第10章　清張作品の地名 一　清張作品における地名 二　清張作品に見る地方地名 三　清張作品における東京 四　清張作品における福岡 五　架空地名 六　まとめ 第11章　清張作品と映像 一　《映画一覧》 二　《テレビドラマ一覧》 索引（人名・件名） 付・参考資料 〔1〕全集収録作品内容一覧（発表順） 〔2〕全集未収録作品一覧（発表順） 〔3〕作品の形態・種類別一覧 〔4〕清張作品の漢語語彙 〔5〕作品種類別発表年時一覧 〔6〕清張原作映画・テレビドラマ一覧 〔7〕清張全作品（50音別）一覧 あとがき

昭和15年、広島県福山市生。昭和42年、東京教育大学文学部国語学国文学専攻、卒業。秋田大学、古代学協会平安博物館を経て、昭和53年、京都女子大学助教授、昭和60年、教授。平成18年、退職。同大学名誉教授。

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